今回はコミュニケーション戦略を考える時、
頭の中でどんな順序で作業を進めているかを整理してみようと思います。
まずはインプット
ここに全体の50%くらいの労力と時間を使っているかも、です。
最初に、いわゆる「3C分析」(Company<自社>Customer<顧客>Competiter<競合>)っぽい事を意識しつつ、今、社会で大きなニュース・論点になっていることをざっと見て「世の中の空気」のようなものをつかみます。
インプットの順番は、
- 提案先から提示された与件(※ない場合は提案先の状況を細かく知るところから)
- 提案先と競合関係にある会社の施策
- 同業種、他業種問わず過去に同じような課題と向き合った事例がないか
- 今、社会で大きなニュース・論点になっていることは何か。そこに提案先が関係する要素はないか
という感じですが、リサーチをしている途中でふと思い浮かんだことを調べたりしているので、
前後したりはします。
さらに、それぞれ具体的にどんな作業をしているのか以下、振り返ってみました。
1. 提案先から提示された与件(※ない場合は提案先の状況を細かく知るところから)
まずは相手の要望をストレートに読み解きます。メモや仕様書がある場合、何度も読み返します。
その上で、「その要望に応えることが本当にその会社にとって良いことなのか?」を自分なりに考えます。
この作業に関しては、提案に反映させるかどうかは後から決めるとして、私は必ず行うようにしています。
もしかすると、提案先が自分たちの解決してほしい課題を具体化・言語化できていない段階かも知れないし、
「とりあえず振り出すために書いた」レベルの与件である可能性もあるからです。
なお、特に与件がなく自主提案を行う場合に関しては、
提案内容よりも課題を掘り当てる作業の方が重要なので、
提案先の会社の歴史やちょっとした小話、これまで取引をしてきた会社からの評価など細かいことまで、
とにかく情報を一通りインプットするようにしています。
2. 提案先と競合関係にある会社の施策
商品・サービスでぶつかる競合他社はもちろん、近い業界にある会社がどんな施策を行っているかを収集します。
自分がこれから提案する内容が他社のパクリにならないよう、
事前に知っておくことが一番の目的ですが、もう一つ狙いがあります。
それは「なぜこの施策は行われたのか?」を逆算して考えること(いわゆるデコン)。
当然ながら「既に実行された施策」しか調べられないので、
考えた結果が合っているのかどうかは当事者じゃないとわかりませんが、
ここで自分なりの「他社の戦略に対する仮説」を立てることで次の項目3に進めていきます。
3. 同業種、他業種問わず過去に同じような課題と向き合った事例がないか
上記2で立てた「何となくの戦略仮説」と似た戦略をとっていそうな商品・サービスがないか、調べます。
ここでは競合や同業種に限らず、「戦略の類似性」でくくるので、全然関係なさそうな業界まで幅広く考えます。
そして、その中でも割と知られている方・成功していると言われている事例をとにかく集めます。
後々企画書に書く可能性を考えた時に、「提案先も知っている」ような事例の方が共感してもらいやすいから、というのが大きいです。
さらに、集めた事例がなぜ成功とされているのか、知られているのか、ポイントを抜き出しておくことも同時に行います(具体事例からポイントを抽象化)。
4. 今、社会で大きなニュース・論点になっていることは何か。そこに提案先が関係する要素はないか
新聞・TVのニュース・Yahoo!ニュース、さらにSNS(特にX)をざっと眺め、
今世の中で話題になっているニュースや論点をつかみます。
ただ、個々の事象を掘り下げて調べるまではせず、あくまでざっくりつかむ程度のインプットを行います。
一つに限らず、いくつか大きなテーマ、「世論」みたいなものを自分の中に取り入れることを意識し、
何となく、提案先の商品や事業に遠からず影響があるんじゃないか、みたいなこともぼんやり考えてみます。
とこんな感じで、提案を考える前に一通りインプットしています。
次に提案の核と全体の流れを組み立てる
次に、自分たちの提案の核と、それを説明するための全体の流れを考えることに30%くらい注いでいます。
インプットした情報は、少し時間を置いて自分の中で咀嚼したいので、
インプット後すぐにこの作業には入らないようにしています。
(そういう意味もあり、インプットには早めに取り組んでいます。インプット中に思いつくこともありますが)
ここではまず<提案の核>、つまり自分たちのはどんな考えを買っていただきたいのか、
を設定することに力を入れ、
おおよそ定まったら全体の流れを作っていきます。
<提案の核>を設定する時、私は言葉で考えることが多いです。
それもみんなが知っているような言葉や概念、物語などを比喩に使ったり。
「社外へ発信する形を取っていますが、裏の狙いに社内の人を勇気づけることがあります」
「これは『鶴の恩返し』をイメージし、◯◯の恩返しをコンセプトにします」
など、内容が簡潔にわかるようになるまで、核を作っていきます。
なお、広告の世界、特に広告会社間競合で、
よく「勝ち筋」と言われますが、私はそんなものは存在しないと思っています。
競合の勝敗は、その時の運や自分の範疇にない要素で決まることが実際に多々ありますし、
提案先商品が市場で成功することについても同様、戦略だけで決まることがまずありません。
勝ち筋=成功するための道筋を描く、というとなんだか説得力も高いので、
外とのコミュニケーション手段として表向きに使うことはあっても、
自分がプランニングを行う時に意識することはないですね。
ただし、「良い筋」はあると思っています。
といっても良い悪いは相対的なものなので、何を基準にするか迷いますが、私の場合、
・過去にプランニングの面倒を見てくれた先輩方だったら、良いと言うかどうか
・翌日改めて見直して、自分自身が「やっぱり良い」と思えるかどうか
で判断しています。
で、話を戻すと、核を決めたら、全体の流れの組み立てに入ります。
個人的に、組み立てる際のツールにはあまりこだわっておらず、
wordのアウトライン機能で作ることもあれば、
コピー用紙の裏紙で済ますこともありますし、
いきなりパワポで枚数使って作り始めることもあります。
流れを作る作業は、どうやったら<提案の核>をわかりやすく、
すんなりと受け入れてもらえるかをかなり意識しています。
数的な調査データを添える場合もあれば、ニュース記事などの事象をピックアップする場合も。
ニュースでこんな事象が取り上げられていて、実際にそれを裏付けるようなこんなデータがあります、
というような論法はよく使います。
最後に企画書を仕上げる
最後に、残った20%で企画書を仕上げます。
仕事ができる人がよく言われるように、本来、企画書にはここまで労力と時間をかけず、
インプットとストーリー作りになるべく時間を費やすのがベストではあると思いますが、
作っている最中に提案ストーリーを魅力的にできそうな要素を思いついたり、
グラフを見やすくするにはどうするのがよいか、単に文章の羅列だとわかりにくいので図解できないか、等
それなりに手間をかけています。
企画書は、チームメンバーとの共同編集のしやすさを考え、パワーポイントで作ることが多いですが、
たまに自分一人で簡潔、もしくは仕上げたいなという気分の時にはmacのkeynoteを使ったりもします。
スライドを魅力的に魅せるテクニックは持っていませんが、、、
とにかくシンプルに、見た時に圧迫感がないよう意識して作ってはいます。
と、ステップを踏んで提案を作っているようにしていますが、
実際はインプットと提案の核づくりを、頭の中でいったりきたりしながら作業を進めています。
さらに、最後の企画書を仕上げる段階になって、
「なんかしっくり来ないな」と自分の中で納得がいかなくなってしまった場合は、
思い切ってその案を捨て、核や組み立てをやり直したりもします(できれば避けたいと思いながらやりがち)。
プランニングにつまづいた時、自分が見返すこともできるように整理してみました。
以上。